第四回 クリスチャン・タゲ

30周年を迎える野毛大道芸。初回から野毛大道芸の歩みを見てきた森直実(野毛大道芸アートディレクター・アドバイザー)が語るディープな芸人列伝。

 

クリスチャン・タゲ

1970年代に、今までと異なるサーカス(フランス語ではシルク)が出現した。

 

曲馬団のショーとして誕生したと言われているサーカスは、ファミリー的集団で芸はそのサーカス世界だけでの伝承であり、門外不出の芸も多かった。それが伝統的なサーカス(シルク)であった。その、旧態然としたサーカスとは異なる、アート性の高い新しいシルク(ヌーヴォー・シルク)の誕生である。日本人もよく知っている「シルク・ドゥ・ソレイユ」(太陽サーカス)は、大型ヌーヴォー・シルクの代表的なサーカスである。

 

クリスチャン・タゲはもともと演劇界で活躍していた人で、伝統的ファミリーサーカスから出たサーカス芸人ではない。クリスチャンは、演劇の中で演出としてサーカスの芸を使った。つまり、サーカス的芸能要素を演劇に取り入れた人と言える。

 

1973年に、クリスチャンはサーカス的な要素を取り入れた演劇集団を設立する。公演する中で、これが高い評価を受けるようになる。このグループが1986年にシルク・バロックとして発展、フランスのヌーヴォー・シルクの誕生である。クリスチャン・タゲはその団長である。クリスチャン・タゲはフランスでは、有名人であるし非常に重要視されている一人である。

 

先に出たシルク・ドゥ・ソレイユの設立時には、クリスチャン・タゲはカナダに渡りアドバイザーとして貢献している。1986年は、第一回「野毛大道芸ふぇすてぃばる」(現「野毛大道芸」)が開催された年でもある。野毛大道芸初代プロデューサー「イクオ三橋」さんは、フランスでクリスチャン・タゲと知り合い、芸を学んだり、のちにフランスのサーカス学校で指導に当たった。その関係から、クリスチャン・タゲを野毛大道芸に招集した。クリスチャン・タゲは、野毛大道芸に空中ブランコを持ち込んだ。ヌーヴォー・シルクの芸が、日本で最初期に出現したのが「野毛大道芸ふぇすてぃばる」なのである。

 

シルク・バロック結成30年の年、野毛大道芸30周年に合わせてクリスチャン・タゲがスペシャルゲストとしてやってくる。クリスチャン・タゲは、この10年くらいの間にサックスの勉強をして、サーカスに積極的に取り入れている。この人と私は、同い年であり、つまり同時代人である事から色々と話が合い、飛び飛びだが30年の交遊になる。フランスの彼の事務所には、私が描いた錦絵風のクリスチャン・タゲの肖像画が掛かっている。クリスチャンは野毛に来て、私と「一千代」のうなぎ、「庄兵衛」の鶏皮の味噌焼きを食べるのを楽しみにしている。

 

コロンビアで誕生しベネズエラで活躍しているファミリーサーカスの一つ「ファミリア・マルチネス」も野毛大道芸30周年スペシャルゲストとして招聘する。
新しいサーカス(ヌーヴォー・シルク)の先駆けの一つであるCIRQUE BAROQUEと伝統的サーカスの流れをくむFamilia Martinez、そして、中国のサーカス「雑技団」で活躍してきた「張 海林」が、野毛大道芸に登場する。大道芸として登場するサーカスであるから、ほんのサワリに過ぎないが、3種の異なるサーカス芸を楽しんでいただきたい。

 

4月23・24日に開催される、30周年記念「野毛大道芸」をお楽しみください。

 

(写真/文 森 直実)

野毛大道芸

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